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「西竹之丸82番地」  1981−1987

「西竹之丸82番地」は我が家の在る場処。40号のシリーズは我が家から歩いて行ける横浜の下町、庶民の生き生きとした暮らしが複雑な構図の中に展開される。洲之内徹氏は「ある無垢の世界」と題し、こう書いた。

(前略)「坂下君と一緒に彼の住んでいる横浜の山手の家から坂道を下って、山の下の街を歩いたことのある私には、このシリーズの舞台があのあたりと見当が付くが、だからといって、実際と似ているのは運河があることと、活気に満ちた庶民の街があることだけで、絵の中の風景も生活も、ちっとも本物に似ていないといえばいえるのだ。要するにこれまた彼の夢想の世界なのである。
ところで、どの家の内部もすべて作者に向かって開かれている、ということは絵を見る者に向かっても開かれているということだが、これは善意の構造といえないだろうか。この構造の基底には人間の人間に対する信頼がある。」(中略)
そしてこう結ぶ。「開かれた一つ一つの家はその一つ一つがこれまた舞台であるが、そこで演じられてるのは彼の夢想のドラマなのだ。お祭りのように賑やかで、しかもどこか悲しいある無垢の世界が、見るものの心にしみる。」

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